初めて買った、プリントのお洋服はＰＨの９３年秋のフェアの柄。
　しろつめ草のブーケの柄でした。

　当時入社２年目だった鷹は、係替え後の慣れない仕事に四苦八苦していて、ちょっとストレスな毎日でした。
　その頃、ＰＨにはもう少しで始まるフェアのワンピースがディスプレイされていました。

　今はフェアの当日にならないと実物は見られませんが、当時は少し前からディスプレイされたりしていたのです。
　ディスプレイされていたのは、薄荷のパッチワークのワンピース。
　薄荷の色に葉の緑と花の白が柔らかく映っていて、とっても素敵でした。

　大切な人が緑が好きだった事もあって、そのワンピースはとても気になるものでした。勿論、自分には少し高価いよね、という気もしていたのだけど・・・。

　そしてフェア当日。
　確か、会社で何か嫌な事があった様な気がします。
　その勢いも手伝って、会社の帰りに急いでＰＨに行ったのだけれど、もうあの薄荷のパッチワークのワンピースはありませんでした。
　残っていたのは、ブルーグレイの、パッチワークのないワンピース。

　お店に行った時はまだ、「絶対に買う」とまでの勢いはなかったのですが、なくなってしまうととっても残念な気持ちで。
　それまでプリントのお洋服はまだ買った事も勿論、試着した事すらなかったのだけど、その寂しかった気持ちも手伝って、そのワンピースを試着する事になりました。

　試着室から出て、鏡の前に立った時、思わず口をついて出た言葉。
　「かわいい〜・・・」
　スタッフさんが笑顔で、「皆さんそうおっしゃいますよ」と言ってくれたので、大分その一瞬の気恥ずかしさは消えたのだけど。なんて言うか、決して自分の容姿に自信がない私が、人前でそんな事を口にしてしまうくらい、そのお洋服は可愛かったのです。最初に欲しかったのとは、型も色も違うのに、それでも、とても可愛かったのでした。

　それから、私はまるで熱にうかされた様にそのワンピースを買う事を決めて。
　その他に、バケツバッグと、メトロ帽とハンカチ。
　それまではワンアイテムずつ、しかも無地物をぽつぽつとしか買っていなかった鷹が、とりあえず、ワンコーディネイト出来るお買い物。

　だから、この日が鷹のカネコ系歴の記念すべき始まりという事にしています。

　誤解して欲しくはないのが、鷹の買ったブルーグレイのシンプルなワンピースはけして最初に欲しかったワンピースの補欠ではなかったという事。
　きっかけはどうあれ、初めて袖を通したプリントのお洋服は、本当に強く、私を惹き付けたのでした。

　それから、５年と半。
　なかなか思い通りのコーディネイトは出来る様にはならないけれど。
　あの時の気持ちを忘れなければ、私は大丈夫かな、という気がします。

1999/07/19