年末の大掃除の時の事。

　細かい所の拭き掃除には、靴下が便利。
　中に手を入れられるし、いい感じ。

　もう履けなくなった靴下をまとめてある中から、次々に靴下を出す。
　その中に一足、ＰＨの靴下があった。

　もう、ゴムも伸びて、同色のモチーフも少し取れかけていて。
　真っ白だった色も、なんだかうす黒くなっている様な。
　もう絶対に、履く事のないであろう、履く事の出来ないであろう靴下。

　ただ捨てるよりは、捨てる前にちょっとだけ役立ってもらおう。
　一度はそう思って、手に取ったのだけれど。
　どうしても、そうする事が出来なかった。

　その靴下は少し特別な靴下だったから。

　ＰＨでお洋服を買い始めた頃。
　帽子から靴まで、全部ＰＨで揃えるのが夢だった。

　予算は限られていたから、何にでもあわせられそうなものを少しずつ集めてゆく事にした。
　その一番最初が、この靴下だったのだ。

　どんなものにもあわせられる様に、白いメッシュに同色のお花のモチーフがついた靴下。
　沢山の靴下を持つ様になっても、ちょっと迷った時にはよく履いていた靴下。

　少なくとも５年以上は、私のワードローブの中に組み込まれていたもの。
　もう靴下としては役に立たなくても、捨てる事なんか出来なかった。

　もう一度、綺麗に洗おう。
　漂白して、モチーフも付け直そう。
　そうしてから、タンスの隅にしまっておこう。

　捨てる必要なんかないのだ。
　時々取り出して、あの頃の事を思いだせばいい。

　それは私の、思い出のかたちなのだ。

2002/04/16