「ぼうやのおじさんが、わたしを、ほんとのものにしてくれたのだよ」
と、ウマはいいました。

「それはもう、大むかしのことだがね。
だが、いったん、ほんとのものになってしまえば、
また、ほんとのものでなくなる、ということはない。
いつまでも、ほんとのもので、いられるのだ。」

−−−岩波書店／マージェリイ・ビアンコ作
「ビロードうさぎ」本文より引用

　鷹のお気に入り第一段から、こんなドマイナーな作品でいいのか・・・と、ちょっと我ながら疑問ではあるのですが、それでも挙げたい、そのくらい大好きなお話。

　岩波書店の、子供向けの薄い本。ぞうが本を読んでいるマークが入っています。
　正確には「スザンナのお人形」というお話と、この「ビロードうさぎ」の２本が一冊になっていて、メインは「スザンナのお人形」の方なのかもしれません。
　もう本当にぼろぼろになってしまったので新しいのが欲しいのだけど、きっと絶版だろうなあ・・・。

　「ビロードうさぎ」は、ぬいぐるみのうさぎの話です。
　小さな、ビロードで出来たぬいぐるみのうさぎが、「ほんとのもの」になるまでの物語。
　冒頭の一文は、うさぎに向かっておもちゃ部屋の先輩住人のウマのぬいぐるみが言う言葉。
　これが、まだ若くて、とても不安定だったワタシの心にがつんと来たのです。

　自己実現とか、そういう事とはまた別に、「誰かに必要とされる事」によって「ほんとのもの」になれる。
　その思う事が、ワタシをとても癒してくれたのでした。

　今も時々、この本をとりだしては「わたしはほんとのものになれたのかなあ」と考えます。
　その、切ない様な、暖かい様な確認作業が、今のワタシには必要なのかもしれませんね。


　岩波書店の紹介のページはこちら。

2000/05/24
2000/05/31・修正
2002/05/03・リンク先追加